舞台人形の用語

 (かしら)  head

人形の頭部。頭を「かしら」とはいわない。最近は、伝承人形の人たちも、〈頭〉と呼んでいるが、間違いである。生首(なまくび)いうが、頭(あたま)とはいわないように、文楽人形などの頭部は、クビを含んだ部分であることが多いからだと思われる。頭は、クビを含まない部分をさしていう言葉という印象からだろう。

胴串 (どぐし / どうぐし) main rod

棒つかい人形や、文楽式抱えづかい人形の首に差し込まれて、人形つかいが握って、首(かしら)を操作する棒。胴串は短いものの方が、細やかな表現ができる。糸で引っ張って、人形の目を閉じたり、うなずかせたりする引き金状の仕掛け〈小猿〉が付いているものもある。丸棒でなく、断面が小判型に削られた棒状になっていいるものは、人形つかいが手探りで操作しても、正確に人形の顔を正面を向けるための工夫。

利き手が右手だとすると、伝統的に、日本人は左手で、西欧人は右手で操作することが多い。西欧人は、顔の表情を直接的に、目や口を開閉して表現することが多く、そのため胴串にいくつもの小猿が付いているので、利き手を使うことが多い。日本では首の微妙な傾きだけで首の表情を表現しようとする傾向がある。むしろ、いろいろ仕掛けを付けることを美しくない考える美意識の差だと思われる。

肩台/パット (かた・だい)

胴串を使う人形の場合、人形の肩を形作る台になる板。中央に穴が開いており、胴串を固定する。(→ クビ穴) 

ウナヅキ (うなづき) 

首を上下に、うなずかせる仕掛け。首に付けた糸を引っ張ったり、ゆるめたりすることで操作する。文楽人形の工夫では、糸を引くと顔が上向くようになっている。最初に顔を上向かせ、次いで顔を下げた方が、よりダイナミックに、うなずく表現ができる。

小猿/小ザル (こざる) 

ウナヅキや、目や口を開閉させたり、眉を上下させるための糸を付ける、胴串や、つかい棒に取り付けられた小さな引き金の様なもの。木や竹で作られていることが多い。指に引っかけてうごかす。同じような働きをするものに、トの字型をした引栓(ひきせん)がある。(→ 引栓

つかい棒 (つかい・ぼう) rod 

藤原玄洋の造語。棒つかい人形の手足などに取り付け、操る棒。竹、木、鋼鉄線などで作られている。一般には、〈棒〉〈差し金(さしがね)〉〈串〉と呼ばれている。近年、多様な形態・構造の人形が使われるようになり、伝統的な言い方では、役割を表す名称として不充分だと考えたからだ。

人形つかいが握る部分は、動かしやすくするために適度に太くしてある。通常は丸棒で作られ、ねじるように回転させることで、ただ握って使うよりも、棒の先のものを、より繊細に動かすことができる。また、つかい棒の先が目に刺さったりしないためにも必要な工夫。

差し金/指し金 (さしがね) rod 

つかい棒のこと。元は、歌舞伎のチョウなどを飛ばすときに使う細い棒である。(→ つかい棒

 (くし) rod 

つかい棒のこと。埼玉県の横瀬人形などの伝承人形劇に使用される、後ろからの棒つかい人形などで呼ばれている。竹串を使っていることでの名称。(→ 串人形

手管 / 首管 (て・くだ / くび・くだ)  

手づかい人形の手や、首に付ける管。指を差し込んで使う。


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