◆ 人形の構造による分類 ◆


棒人形

棒人形 (ぼう・にんぎょう) marrot

川尻泰司の造語。棒状の人形で、その上部が首(かしら:人形の頭部のこと)になっている。棒の下部を直接持って操作するが、人形を直接つかんで操作する者もある。
 後述する<棒つかい人形>と名称が似ているので、混同しがちであるが、棒人形は棒自体が人形に見えるものであり、棒つかい人形は、棒の先に付いた首や、手などを操作するものということで区分される。
 もっとも単純な構造の人形だが、ヨーロッパや日本において、その単純さを生かした現代的表現を、再発見する創造が作品として多数行われてきた。構造が単純のためにとかく軽視されがちだが、棒人形による人形劇はもっと重視されてよいと思う。

棒人形

立ち絵人形 (たちえ・にんぎょう) cartoon puppet

うちわのような形状で、絵の描いてある紙の下に串をさして、串の部分を持って演じる人形。日本では、江戸時代から立文庫としてあり、戦前、紙芝居の前身として演じられていた。戦後、復員者の職業として行われたが、演技のための技術の習得がとても高度で、絵を描いた紙を、ストーリーを追ってただ差し替えていくだけの街頭紙芝居に置き換わっていき、この形では現在ではほとんど見られない。

今日では、長柴孝堂の考案したペープサートが、幼児教育の場で広く行われている。また、川尻泰司は抱えづかい人形として、人形劇団プーク、人形舞台エミなどで、新しいスタイルの人形劇として発展させた。

 立ち絵人形
     「魔王よ!如意棒の露と消えろっ!」
立ち絵人形       立ち絵人形
 表「御主君のりりしい立ち廻り」    裏「 御主君は、一太刀り受けて『アーッ』」

びん人形 (びん・にんぎょう)

テーブル劇場で演じる人形。太いものや細長いものなど、いろいろの空ビンを加工して、テーブルの上に並べながら人形劇をやることができる。このビン人形は、首、手足の関節がないことが多く、人形自体を細かく動かすことはできない。むしろ、その動かないという特性を活かして、新しい舞台が創り出されている。

素材として、ビンを使わない場合にも、この呼称を用いることには違和感があるが、現在のところ適当な呼称が見当たらない。

指人形 人形劇団 春きゃべつ「そらいろのたね」
       人形劇団 春きゃべつ 「そらいろのたね」

ペープサート (ぺーぷ・さーと) paper puppet theater

永柴孝堂(1909 -84)考案の戦後生まれた人形劇(Paper puppet theater)。ペープサイドともいいう。いずれも氏の和製英語。従来からあった立ち絵を、うちわ大に大型化するとともに、高度な操作技術であったものを簡略化した。その簡便性から、主として幼児教育の場で広まり、現在も盛んに行われている。永柴の英語表記では、Paper support theater となっている。永柴は、うちわ型人形と呼んだ時期もある。

また、映像の世界でも使われており、ペープサートという映画手法の用語にもなっている。最初のテレビ放送「冒険漫画人形劇・鉄腕アトム」(1957.4.13 - 9.2 放送)は、この形式。

ダンプに乗ったクマ座「日天さん 月天さん」
ダンプに乗ったクマ座「日天さん 月天さん」

 


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 参考文献
「日本人形劇発達史・考」 川尻泰司 1986
「学校劇事典」 落合聰三郎 1984