● 人形劇切手カタログについて

このカタログは、5つのテーマに分かれています。

人形劇に関する切手

所収されているのは、広義の意味での人形劇です。舞台面や、舞台人形、および人形劇に関するもの(モニュメント、関係人物など)が、切手本体、マージン(余白)、タブ、ペーンの表紙などに描かれているものです。関係のありそうなものは、できるだけ収録しました。

また、実際は仮面劇に属するのですが、着ぐるみによる演劇も、慣習的に人形劇と呼ばれていますので、人形劇切手としました。実際の作業では、仮面劇と着ぐるみの人形劇の区分は悩ましいところですが、頭部が立体的な構造を持つ着ぐるみは人形劇切手としてあります。

アニメのうち「人形アニメーション」は,広義の人形劇からも外れますが、掲載の範囲としました。CGの技術が進歩し、人形アニメに見まがうものがあり、混入しているかもしれません。

影絵人形劇に見えるイラストなどについても、収録の対象としました。

近年多く発行されるようになったP切手(フレーム切手)に関しては、掲載から除外しました。あらかじめ用意された切手に、誰でも(個人でも)、私的なデザインを印刷して発行できます。補足が困難なのと、発行部数が極端に少ない──場合によっては10枚のものもあるからです。

影絵表現の切手

実際の影が、影絵人形のように見えるものなど、影絵に見えそうなものは、なんでも収録の対象としました。

影絵表現(切絵)の切手

「影絵表現」の切手の収録数が膨大になったので、影絵に見える切紙(剪紙)の切手や、シルエットと呼ばれる切紙は、「影絵表現」から切り離して、ここに収録しました。

なお、あきらかに、切り紙であっても人形劇美術家が作成したものは、「人形劇切手」にも重複して掲載してあります。

シルエット: 日本では、影絵劇が「シルエット」と呼ばれていた時代があります。もともとは、時のフランスの財務大臣シルエット郷が、貴族の肖像画にかける乱費を抑制するために、「切紙の肖像も、充分芸術的であるから、高価な油絵の肖像画にかわりうる」と、これを推奨する通達を出したことから、人々が、ケチとの揶揄の意味を込めて「シルエット」と呼ぶようになったものです。

剪 紙: 中国の伝統的切紙のことです。中国系の人々を意識し、年賀を祝う切手が、各国で多数発行されています。剪紙を踏まえてデザインされた切手についても、収録の対象としました。

ピノキオの切手

コロディ原作のピノキオは、もともと舞台人形ではありませんでした。本来は、次項の「参考切手」に掲載されるべきでしょうが、数が多い点と、ディズニー映画により、糸あやつり人形のピノキオとしてゼベットじいさんに作られるという設定になり、広く知られるようになりました。というわけで、ピノキオ自体が描かれている切手を、別の項目として掲載しました。ただし、ピノキオ以外のキャラクターのみが描かれているものは除外しました。

「人形劇切手」に採用されたものも、便宜のため、重複して掲載してあります。

参考切手

ゼンマイなどで動くオートマータ(自動人形)や、ロボット、物に魂が宿って動き出すホウキの精のアニメなどが所収してあります。これらは、自ら動く構造で、人が操作して動かすためにつくられた舞台人形ではないからです。 乗り物の自動玩具などは、人形にそぐわないので除外しました。また、乗り物に人形が乗っているだけで、人形が動かないものも除外しました。 さらに、主に鑑賞するための人形(置人形)は、動かすための人形ではないので、除外しました。

人形劇切手に入れるか、判定が保留されているものも、一部掲載してあります。

 

● 人形劇の人形「舞台人形」とは

 「人形劇って何?」という問いかけに答えるのは、結構むつかしいものです。「人形を動かして演ずる演劇」というのが、一般的な答えです。では、人形とは何か? 通常は、人の形をしていますが、動物であったりもします。あるいは、ホウキやバケツに目鼻を描き、人形にしたものもあります。これらは、「人形」とイメージできるものばかりです。

しかし、ホウキやバケツそのものに目鼻を描かない、手足もつけない、ただの物として、表現する人形劇もあります。この場合、ホウキやバケツそのものは、物であって人形ではありません。それらを単純に人形と呼ぶには違和感があります。そのことから「物体劇(オブジェクト・シアター)」と呼んだりもします。

したがって、狭義の意味での「人形劇」とは、「物体を動かして表現する演劇」と定義することになります。その物体は、形状にかかわらず、何らかの形で擬人化されていることにもなります。これら擬人化された物体を含めて「舞台人形」と呼ぶことにしました。私の考えた造語です。

日本語では、単に「人形」というと、鑑賞するためのものと、人形劇で使うものとの区分ができないので、それぞれ「置人形」と「舞台人形」といいわけてあります。

着ぐるみの人形で演じる演劇も、「人形劇」と一般的にいわれていますが、これは「仮面劇」に分類されるべきものです。演劇は、人間そのものが演じる「人間劇」と、物体を使って演じる「人形劇」、人間が何者かになり代わって演じる「仮面劇」の3つの手法に分けることができます。人間劇で俳優が扮装する場合は、あくまでも人間に付加するものです。仮面劇では,身につけることにより,そっくり何者かに成り変わるという表現なので,区分されています。

というわけで、着ぐるみの人形で演じる演劇は、あきらかに「仮面劇」になります。「劇団飛行船」は、自らを「マスク・プレイ」と呼んで、人形劇と別の立場に立っています。しかしながら、このカタログでは、一般的な慣習にしたがい広義の意味での「人形劇」として扱いました。

 


● 国名表記について

日本語、英語表記とも、ISO 3166-1にしたがって表記してあります。

ただし、すでに消滅した国や、合併・分割した国については、一番近い国に所収するか、付記のような形で旧国名表記まま、別項目に掲載しています。

 


● 土侯国切手について

土侯国(どこうこく)切手というのは、1960~1970年代にかけて郵便に使用する目的でなく、切手収集家目的に濫発された郵便切手に対する総称です。アラブ土侯国切手と呼称される場合もあります。

主な土侯国として現在ではアラブ首長国連邦を構成する7つの首長国のうち5つで発行されていましたが、他にも北イエメン(1962年に共和政移行)の国王派ゲリラや、南イエメンの首長国(いずれも現在のイエメンに統合)も入る場合があります。

1964年ごろからアラブ首長国連邦の成立する1972年ごろまで各首長国(アブダビ、ドバイを除く)による切手発行が行われていました。切手販売による現金収入目当てに、世界各国の切手収集家を狙ってすさまじい種類の切手を粗造濫発したのです。そのため世界中に大量の土侯国切手が流通しました。

最終的に1972年限りで発行が終了しましたが、契約終了直前に切手発行エージェントが、切手を濫発したため、最終的に発行された種類も不明で、数千種以上とされています。 なお、前述のようにイエメンの首長国が発行した切手や、クウェート政府の許可をとらずに、日本万国博覧会(大阪)の会場で販売された似非切手も、土侯国切手と呼ばれることがあります。

土侯国切手は、コレクター間では、正規の郵便切手ではなく、ラベル扱いされていますが、参考のために掲載してあります。(カタログの行頭に印がついています)

これらの切手は、世界的な切手カタログである「スコット・カタログ」に収録されていないほか、切手収集家による国際的な切手展(切手コレクション・コンクール)の出品リーフに土侯国切手を入れると、大きな減点にされますので注意が必要です。

 


● 切手番号について 

一般によく使われるスコット番号を基準にしました。スコットに見当たらない場合は、ミッヘルなどを記載しました。この番号がわかると、切手屋さんでの購入の際に、とても便利です。スコット番号には、先頭に原則「#」をつけてあります。調査中のものは、一部「#」を省略しているものもあります。

 


● 切手の寸法について

切手のサイズについては、コレクターの従来からの慣習では、余白の部分は除外してデザイン画の最大寸法を記載することになっています。初期の切手は、あらかじめミシン目がなく、印刷された切手を、自身がハサミで切り離して、使用していたからです。

しかし、このカタログでは、ミシン目線を含む切手の最大寸法で表記してあります。今日では、ミシン目(目打)の入っていない切手は、コレクター用の特殊なものを除いては、ほとんど皆無です。

それにデザイン上、余白のない切手も多数あり、なかにはデザインがミシン目のサイズをはみ出る形で、デザインされたものも多数あります。おまけに背景が白地になっているものでは、どこまでが切手のデザインか,特定できないものまであります。図は、コレクター用の小型シートで、切手部分にミシン目がありません。左右については、どこまでが切手なのか悩みますが、ミシン目のあるものも発行されているので、この場合は寸法がわかります。

          チェコの人形劇切手 (チェコスロバキア 1978)

ハサミで切って使っていた時代は、切断するため、デザインの境界線が明確だったのですが、ミシン目が入るようになって、その必要がなくなったために、境界線を意識しなくてよいようになったからだと思われます。

このカタログで扱う切手は、切手の歴史的創生期のものは含まれていませんので、実際の切手の大きさがわかるミシン目線の最大サイズを採用することにしました。ただし、現物が入手できないなどで、切手のカタログなどから収録したものや、ミシン目のないものについては、カッコ書きで、従来の慣習通りのサイズを記載しました。

 


● 購入価格について

項目の右下隅に円マークのついているのが、購入価格です。その下は、およその購入年です。後で思いついたので、不充分な情報です。あくまでも参考程度に。  本来は、評価額を記載すべきなのですが、当然毎年のように変更されますので、対応しきれないので、申し訳ありません。切手を求めるときの参考にしてください。

ちなみに、掲載されている舞台人形の切手の中で、単片1枚で最も価格の高かったは、インドネシアのスーベニア・シートの6,600円です。

        インドネシアの人形劇切手 (インドネシア 1984)